変形性膝関節症
特徴
私たち人間の関節には、「関節軟骨」と呼ばれる軟骨が存在します。
関節軟骨は骨の端を覆うように付着していて、荷重に対するクッションや、関節運動を滑らかに行うといった役割を担っているものです。
この膝の関節軟骨が老化によって弾力性を失い、膝や膝周辺の痛みをはじめ、階段の昇り降りをスムーズにできなくなったり、膝を伸ばせず歩行が難しくなるといった機能障害がみられる病態を変形性膝関節症といい、厚生労働省では、自覚症状のある患者数を約1000万人、潜在的な患者数においては約3000万人と推定しており、その中でも特に40歳以降の女性に多くみられます。
症状といたしまして、歩き始めなどの動作開始時痛、階段昇降時痛をはじめ、ひざ関節の腫脹(はれあがること)、内反変形(O脚)、関節水腫(関節内に水が溜まること)などがみられます。
原因
膝関節の中でクッションの役割をする軟骨が変性、あるいは摩耗することで痛みを生じます。
軟骨が変性・摩耗する理由は、年齢による一次性関節症と、外傷や膝に関する疾患など明らかな原因による二次性関節症とに大別されます。
対処法
膝への負担を軽減させると良いです。
体重を減らす・正座をしない・大腿四頭筋(太ももの前面)の強化をはじめ、膝を温めて血行を促進するのもおすすめです。
当院での治療法
膝の痛みは、周辺の筋肉および血管を緊張させてしまうことで循環の機能低下をきたし、さらに痛みを発生するという負のスパイラルをつくります。
このため、『膝の痛みを取り除くことを第一の目的』として治療を開始します。
まずは、複数の経穴(ツボ)を用いて、鍼(はり)、灸(きゅう)を行います。
使用する経穴の一例です。
- 梁丘…膝蓋骨底外端の上方で大腿直筋腱と外側広筋との間に位置します。
- 血海…膝蓋骨底内端の上方で内側広筋の隆起部に位置します。
- 鶴頂…膝蓋骨底上際の中央にある陥凹部に位置します。
次に、血流の促進を目的に、下肢全体の按摩(あんま)、指圧、マッサージ、オイルマッサージへと進んでまいります。
また、変形性膝関節症には「大腿四頭筋訓練」が重要となります。
膝関節痛は、大腿四頭筋の萎縮を伴うことが多くみられます。筋肉は、関節にとって天然のサポーターです。
当院では必要に応じて、大腿四頭筋の筋力トレーニングについてご説明をさせていただいております。
実際の症例
2021年11月16日/72歳/男性
3年前まで産婦人科医。変形性膝関節症となり、杖なしに歩くことができなくなって引退された。
「大好きだった山登りもあきらめた。まだ人生にやり残したことがたくさんある。スキューバもやってみたいし、パラグライダーで飛んでみたい。何よりもう一度、杖なしで歩きたい。」
- ひざ周辺の経穴(ツボ)に鍼(はり)、灸(きゅう)、赤外線治療器。
- 両下肢にオイルマッサージ。
- 全身の気血循環を目的に、全身的なあん摩・指圧・マッサージ。
- 治療後、杖なしに立つことが可能に。「ベッドから立ち上がるのもずっと杖を使ってきた。
杖なしで立てるのは久しぶりですよ。まだ重さはあるが、痛みはない。」と、次週をご予約されてお帰りに。
翌週2021年11月25日に2度目のご来院。
「この1週間、痛みがなかった。でも、重い感じが残っていて杖は手放せない。」
- 前回と同じ治療法に、太もも前面のあん摩・マッサージを追加。
2021年12月6日に3度目のご来院。
- これまでと同じ治療法。
2021年12月16日に4度目のご来院。
「今日は自宅から歩いてきた。杖はあるけど、なくても平気かも知れない。家の中では杖を使わなくなったし。」
- これまでと同じ治療法。
2021年12月27日に5度目のご来院。
「自宅から杖なしで歩いてきましたよ。来年に山登りを再開しようと思っています。」
- これまでと同じ治療法。
2022年1月10日に6度目のご来院。
「今日も杖なしで歩いてきた。家のこともできるし、家族も喜んでいます。」
- これまでと同じ治療法。
2022年1月21日に7度目のご来院。
「痛みも重さもないし、仲間と一緒に山登りを再開する予定です。ほかにもいろいろとやりたいこともあります。」
- これまでと同じ治療法を行い、終了した。