小胸筋症候群(過外転症候群)
特徴
胸郭の出口付近において腕や肩の運動・感覚に関与する神経と動脈が障害を受け、肩、腕、手のしびれや痛み、細やかな運動が難しくなるなどを自覚する状態を総称して胸郭出口症候群といいます。
その胸郭出口症候群のうち、肩が前に巻き込むような猫背姿勢になることで、胸の筋肉が硬くなり、神経や血管を圧迫して腕や手に痛みやしびれ、むくみなどの症状を引き起こすのが小胸筋症候群です。
※過外転症候群と呼ばれることもあります。
症状
- ✔️腕から指先にかけてしびれや痛みがある。
- ✔️腕が重だるい。
- ✔️握力の低下。
- ✔️ボタンの着脱など、細やかな動作が難しい。
- ✔️息苦しいことがある。
- ✔️電車のつり革につかまると手がしびれてくる。
- ✔️朝起きたとき、腕にむくみがある。
原因
小胸筋症候群は、小胸筋の過緊張によって神経や血管を圧迫し、痛みやしびれなどの症状が出現します。
デスクワークやスマートフォンの使用などでうつむきの姿勢が続くと、知らない間に肩が前方に出る巻き肩となり、小胸筋の過緊張を引き起こす原因となります。
また、赤ちゃんを抱っこする時間が長くなることでも小胸筋の緊張がみられることがあります。
当院での治療法
鍼、灸、指圧、マッサージなどを用いて小胸筋の緊張を緩和することで、症状の原因となっている神経(腕神経叢)と動脈(鎖骨下動脈)への圧迫を軽減していきます。
また、小胸筋のストレッチ方法をご説明し、実際に行っていただいております。
以下は、普段ご自宅でも行える簡単なものですので、気になる方は是非試していただければと思います。
≪小胸筋ストレッチ≫
- ①両手のひらを軽く組んで頭の後ろを触ります。
- ②胸を張った状態で、両方の肘をゆっくりと後方に下げていきます。
※このときに反動をつけないことが大事です。ゆっくりと呼吸しながら肘を後ろに下げてください。
実際の症例(1)
2022年4月4日/78歳/女性
「右の首から肩、腕、手にかけてとってもつらいんです。力も入らないし、しびれもあるんです。
右手で掃除機が持てないので、どうしたものかと思って心配で。」
- 右の斜角筋と小胸筋に按摩(あんま)、指圧、マッサージ。
- 右の上腕から手首にかけてオイルマッサージ。
- 首に鍼(はり)、灸(きゅう)、按摩。
- 治療後、「こうやってグーパーが出来なかったんです。力も入ります。さっきまでとは全然違います。」
2022年4月12日に2度目のご来院。
「首が痛いんです。後ろに曲げることができないんですね。うがいをするときに痛むんです。
手はね、しびれはまだ残ってますけれども、握れるようになりました。」
- 前回の治療に肩甲挙筋へのアプローチを追加。
- 治療後、頭を後屈させながら「上を向けます。ここまで向けなかったんです。本当に楽になりました。」
2022年4月19日に3度目のご来院。
「随分と楽になりました。右手の親指と人差し指がまだしびれるんです。」
- 前回と同じ治療法。
2022年4月29日に4度目のご来院。
「右手の親指の付け根が痛いです。」
- こ前回と同じ治療法。
- 治療後、「手の痛みがなくなってます。」
実際の症例(2)
2022年9月10日/59歳/男性/農家
「左肩と肘の痛みと指先に常時しびれがあります。最近は力も入らなくなってきた。農業をやっているのですが、農具を持てなくてとても不便。この時期は忙しいので、どうにかなりませんか?」
- 左の斜角筋と小胸筋にとても強い緊張と圧痛がみられたため、接触鍼(刺さない鍼の一種でローラーでコロコロと転がすようなもの)、按摩、指圧、マッサージを用いて筋緊張を緩和。
- 続いて肩と首に鍼通電療法(低周波治療器)を行い、筋緊張を緩和。
- 再び、左の斜角筋と小胸筋に接触鍼、按摩、指圧、マッサージを実施。途中、「あっ、今しびれが消えました。うん、しびれは無いですね。」
※治療が終わり、お見送りさせていただいた約30分後に再度ご来院。「よかったらこれを持って帰ってくださいよ」と、ご自身が育てられた沢山のお野菜をお持ちくださいました。