便秘

特徴

便秘について日本内科学会は、「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と定義しています。

食べ物は順番に口腔、食道、胃、小腸、大腸、肛門という名前のついた消化管の中を運ばれ、消化や吸収をされて残ったものが便となって排出されます。
このように消化管は私たちが生きる上で非常に重要な働きを担っている器官なのですが、手や足のように自分の意志で自由に動かすことができず、自律神経に支配されています。

胃-大腸反射とは

食べ物が私たちの胃に到着しますと、脳が腸へ『蠕動運動(ぜんどううんどう)をしなさい!』という命令を出します。
これを「胃-大腸反射(い-だいちょうはんしゃ)」といいまして、腸の蠕動運動によって食べ物の残りカスや腸内細菌などを運びます。
そして重要なことは、この「胃-大腸反射は胃が空っぽのときほど強く起こる」とされているのです。
だから朝食後は排便が起こりやすいわけです。

では、朝食を抜いてしまうとどうなるでしょうか?

食べ物が胃に到着しないので、胃-大腸反射は起こりません。
上述のとおり、胃が空っぽらのとき、つまり起床後の食事は強い蠕動運動が起こりやすい時間なのに、朝の食事を抜いてしまう人は、この最高のタイミングを逃してしまっていることになります。
そして、便秘になりやすい身体になってしまうのです。

排便反射とは

胃-大腸反射は食べ物が胃に到着したときに起こる反射ですが、食べ物のカスが直腸に到着したときに起こる反射が『排便反射』です。

直腸が「食べ物のカスが直腸に届いたよ!」と脳に信号を送ることで、普段私たちが意識せずに締めている肛門の括約筋が緩み、排便を行えるような準備を整えるのです。

原因

私たちの身体とストレスには密接な関係があります。
私たちの身体はストレスを感じると、交感神経が優位になります。
交感神経とは、緊張時に働く神経です。
しかしながら、上述の蠕動運動を含め、胃腸の働きを支配しているのは副交感神経です。
このため、ストレスは腸の蠕動運動を低下させ、便秘を引き起こす大きな原因となります。

また、排便を我慢してしまうことも便秘の原因となります。
仕事先での便意など、何らかの理由で習慣的に便意を我慢あるいは無視していますと、上述の排便反射(直腸に便が到着したときに起こる反射)が弱くなってしまい、便秘の原因となります。
これを直腸性便秘、または習慣性便秘と呼んでいます。

当院での治療法

便秘でお悩みの方の多くに首・肩から肩甲骨の内側を通って背中へ下るラインに強い凝りのような緊張がみられます。
これは交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整っていない方の徴候です。

まずは自律神経の調整を目的に、首や肩から背中に並ぶ経穴(ツボ)への鍼(はり)治療と手首やお腹の経穴にお灸をします。
この時点でお腹が「ゴロゴロ」と鳴り始める方が少なくありません。
次に、東洋医学の観点から便秘は「気の異常」「血瘀(血の状態異常)」「水の不足」として捉え、それぞれの正常化を図ってまいります。
最後に、腹部への直接的なアプローチといたしまして、按腹(あんぷく:お腹へのマッサージ)療法を行っております。

実際の症例(1)

2022年2月26日/32歳/女性/事務職
便秘。この2週間まったく反応なし。肩と首の凝りもひどく、頭痛もある。月経痛もひどい。

  1. 腹部の経穴に灸。下肢の胃と脾の経絡に沿って刺鍼。
  2. 首と肩に鍼、灸、あん摩、指圧を用いて凝りを軽減。
  3. 内臓への自律神経調整を目的に、背部に並ぶ経穴への鍼、灸。
  4. 全身の気血循環を目的に、全身的なあん摩・指圧・オイルマッサージと按腹療法。
  5. 治療後「首が軽くなった!お腹の反応がありそうな予感がします。」

翌々週となる2022年3月12日に2度目のご来院。
「前回のあとの1週間はウソみたいに便通がありました!それも自然な便通という感じです。
でも、まだ少し残っているような感じがあります。首は治療前のつらさを10とすると、5くらいです。」

  1. 前回と同じ療法。
  2. 治療後、首を左右に振りながら「首に引っ掛かりがあったんです。左に向けないときがありましたもん。でも今は向けます!」

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